目次
はじめに
英語の記事を読むとき、全文をコピーして翻訳サービスに貼るのは面倒です。かといって、DeepL の有料プランを契約するほどでもありません。そこで、Claude API で動く翻訳用のブラウザ拡張機能を自作し、DeepL と比べてみました。
気になったのは次の2点です。
- 精度:DeepL と比べて、訳文の質はどうか。安いモデル(Haiku)と高いモデル(Sonnet)で差はあるか
- コスト:従量課金の API で、実際にいくらかかるか
先に結論です(一回きりの比較の結果です。詳しくは「比較の条件」を参照)。
| 観点 | 結果 |
|---|---|
| 精度 | 今回の段落では Haiku 5.5 がいちばん読みやすかった。DeepL には誤訳が1か所あった。Sonnet 5.5 が Haiku 5.5 より良いとは言えなかった |
| コスト | Haiku 5.5 で記事1ページ約0.7円(実測)。DeepL の有料プラン(月額1,380円)と同じ金額で約2,000ページ訳せる。Sonnet 5.5 は単価が Haiku 5.5 の20倍 |
比較の条件
- 題材:Google Developers Blog の Gemma 4 発表記事(2026年4月2日公開)の冒頭段落
- 実施日:2026年10月16日
- 訳し方:Claude の2モデルは自作の拡張機能でページ全体を翻訳。DeepL はブラウザで同じページを翻訳
- 回数:それぞれ1回だけ(一回きりの比較)
この比較は一回きりのもので、再現性はありません。 AI の翻訳は同じ文章・同じ設定でも毎回少しずつ変わり、DeepL も更新で訳が変わることがあります。同じ手順で訳し直しても、ここに載せた訳文になるとは限りません。1段落を1回ずつ訳した結果として、参考程度に見てください。
精度の比較
原文です。

DeepL:

Claude Haiku 5.5:

Claude Sonnet 5.5:

(いずれも、ブラウザでページを翻訳した状態の画面です。タイトルと冒頭の段落を比べています)
箇所ごとの違い
| 箇所 | DeepL | Haiku 5.5 | Sonnet 5.5 |
|---|---|---|---|
| your own hardware | 独自のハードウェア(誤訳。Google 独自の機械と読める) | お使いのハードウェア | 手元のハードウェア |
| 冒頭の文の組み立て | 長い1文。「Gemma 4」が最後まで出てこない | 2文に分割 | 長い1文(DeepL 寄り) |
| redefine what is possible | 実現可能なことの限界を再定義する | できることの常識を塗り替える | 可能なことを塗り替える(組み合わせがやや不自然) |
| タイトルの edge | エッジに導入 | エッジデバイスに | エッジへ |
| fine-tuning | 微調整 | ファインチューニング | ファインチューニング |
| 英数字前後の空白 | 混在 | 統一 | 統一 |
| リンクの保持 | 保持 | 保持 | 保持 |
気づいたこと
- DeepL の誤訳は、意味が変わる種類のものでした。「your own hardware」は読者自身の手元の機械のことですが、「独自のハードウェア」だと Google の専用機のように読めます。オンデバイスで動くことが売りの記事なので、要点の取り違えにつながります。
- Haiku 5.5 は、長い1文を2文に分けて主語(Gemma 4)を先に出していました。原文の構造からは離れますが、日本語としてはいちばん頭に入りやすい訳でした。
- Sonnet 5.5 は、高いモデルなのに Haiku 5.5 より良いとは言えませんでした。文の組み立ては DeepL に近く、言い回しにやや不自然な箇所がありました。
- 技術用語(fine-tuning)は、Claude の2モデルがカタカナ語、DeepL が「微調整」と訳しました。技術記事ではカタカナ語のほうが通じやすいと感じます。
- リンク(「Gemma 4」の部分)は、3つとも保持されていました。
コストの比較
1ページあたりの実測
この記事1ページを Haiku 5.5 で訳したときの使用量です(接続テストを含む)。
| 項目 | 値 |
|---|---|
| リクエスト数 | 16 |
| 入力トークン | 17,523 |
| 出力トークン | 5,462 |
| 料金 | 約0.0045ドル(1ドル150円で約0.7円) |
単価は Anthropic の料金ページのとおりです。
| モデル | 入力(100万トークンあたり) | 出力(100万トークンあたり) |
|---|---|---|
| Claude Haiku 5.5 | 0.10ドル(10万トークン以下のプロンプト) | 0.50ドル(同) |
| Claude Sonnet 5.5 | 2.00ドル | 10.00ドル |
この拡張機能は1回のリクエストを約2,500文字までに分けて送るので、10万トークンを超えることはなく、Haiku 5.5 は低いほうの単価がそのまま使えます。
Sonnet 5.5 にするといくらか
Sonnet 5.5 の単価は、入力・出力とも Haiku 5.5 の 20倍 です。同じページを同じトークン数で訳したと仮定すると、1ページ約0.09ドル(約13円)になります。実際のトークン数はモデルによって変わるので、あくまで目安です。
精度の比較で Sonnet 5.5 が Haiku 5.5 を上回らなかったことを考えると、普段使いで Sonnet 5.5 を選ぶ理由はあまりありません。
DeepL の有料プランと比べると(試算)
Haiku 5.5 で1ページ約0.7円なので、1日10ページ読んでも月に約200円です。読むページの長さで変わるので、実際の請求額は Claude Console の使用量の画面で確認しています。
DeepL の有料プランは月額1,380円の定額制です。Haiku 5.5 なら、同じ1,380円で約2,000ページ(1日あたり約65ページ)訳せる計算になります。
| 月の費用 | |
|---|---|
| DeepL 有料プラン | 1,380円(定額) |
| Haiku 5.5(1日10ページ) | 約200円 |
| Haiku 5.5(1日65ページ) | 約1,380円 |
毎日大量に訳すのでなければ、従量課金の Haiku 5.5 のほうが安く済みます。
注意:Claude のサブスクと API は別契約
Claude のサブスクリプション(Pro / Max)には、API の利用は含まれていません。API は Claude Console でクレジットを購入して使う従量課金で、APIキーもそこで作ります。使いすぎが心配な場合は、Console の「Limits」で月の上限額を決めておけます。
コストを抑えるための工夫
1ページ約0.7円で済んでいるのは、拡張機能側で次の工夫をしているためです。いちばん効くのは「画面に近い段落だけ訳す」ことで、長いページでも読んだ部分の分しか料金がかかりません。
| 工夫 | 内容 | 効果 |
|---|---|---|
| 見えている部分だけ訳す | 画面に近づいた段落から順に送る(IntersectionObserver) |
読まない部分は送らない |
| 訳文のキャッシュ | 一度訳した文章を覚えておく | 原文⇄訳文を切り替えても API を呼ばない |
| 日本語の段落を送らない | ひらがな・カタカナを含み、漢字かなの割合が4割を超える段落は除外 | 日本語が混ざったページで無駄が減る |
| まとめて送る | 約2,500文字または40段落ごとに1リクエストにまとめる | 1回ごとに送るシステムプロンプトの分を減らす |
| 安いモデルを既定にする | 既定は Haiku 5.5。設定で Sonnet 5.5 に切り替え可能 | 普段使いの単価を下げる |
| 使用量を見える化 | 使ったトークン数を積算し、設定画面に表示 | 使いすぎに気づける |
使った拡張機能について
比較に使ったのは、Chrome 拡張機能(Manifest V3)として自作したものです。Chrome、Brave、Edge などの Chromium 系ブラウザで動きます。
- 選択範囲の翻訳:文章を選ぶと出る「訳」ボタン、または右クリックメニューから
- ページ全体の翻訳:ツールバーのアイコン、またはショートカット(もう一度押すと原文に戻る)
サーバーは置かず、拡張機能から Claude の Messages API を直接呼んでいます。訳文は tool use で「文字列の配列」として受け取るので、出力の形が崩れません。ページ全体を訳すときは、リンクや太字を番号付きの仮タグに置き換えてから送り、訳文が返ったら元の要素に戻しています。精度の比較でリンクが保持されていたのは、この仕組みによるものです。
まとめ
- 精度:今回の段落では、Haiku 5.5 がいちばん読みやすい訳でした。DeepL には意味が変わる誤訳が1か所あり、Sonnet 5.5 は Haiku 5.5 を上回りませんでした。高いモデルほど読みやすいとは限りません。
- コスト:Haiku 5.5 で記事1ページ約0.7円でした。DeepL の有料プラン(月額1,380円)と同じ金額で約2,000ページ訳せます。Sonnet 5.5 は単価が20倍なので、普段使いは Haiku 5.5 で十分です。
一回きり・1段落だけの比較で再現性はないため、今後は題材や回数を増やして傾向を確かめ、1か月使ったときの実際の請求額もまとめるつもりです。
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